クロユリ団地に引っ越してきた介護師を目指す明日香は、隣人の騒音に悩まされていた。家族に相談しても真剣に考えてくれず不満はつのる。そんなある日、授業で孤独死の話を聞いた明日香はもしやと思い隣室に侵入。そこで死体となった老人を発見する。衝撃的な体験に気落ちする明日香。さらに心霊現象まで体験してしまい彼女は遺品清掃業の笹原に相談したり、団地に住んでいる男の子のミノルと遊ぶことで心の平穏を保とうと試みる。明日香を心配した笹原は知り合いの霊能者に助けを求め、かくして予想外の事実が明らかとなるのだった。
前半部分はヒューマンドラマのような雰囲気で後半からはまさにホラーといった展開になります。しかし皮肉なことに前半部分の方が怖さがあり、ホラー的な演出がなされる後半が怖くない。これは一考の余地があるように思います。前半は意味深な間で違和感を持たせたり、カメラワークなどにも計算が感じられた。対して後半はどこかで見たような印象で平凡。
前半部分に怖さがあると書きましたが、少し不気味さを感じられるという意味であって、話が面白いわけではありません。それでも辻褄は合っているので悪くはない。ホラーでよくあるのが、主人公が勝手に部屋に入って行くシーンですが、この作品では介護師を目指す学生を主人公にし、さらに孤独死の話を聞かせることでその不自然さをクリアしていた。どんでん返しもあってやはり考えられていると感じた。これと比べると後半は安直に見える。最後に炎で焼かれるシーンも全然本物の火に見えない。これだと興醒めしてしまう。
ネットでの評判を見ると、前田敦子の演技が酷いという意見が散見されますが、僕は別に悪いとは思わなかった。演技が下手でひっかかるなんてことはなく自然に観られました。問題は演技ではなくストーリや演出の方でしょう。ホラー作品に求める第一位は恐怖なので怖くないと話にならない。
本作を見ると、やはり若い女の幽霊を使うのが一番いいのかなあと思ってしまう。もうみんな見飽きているし新奇性はまったくないにしても、心霊系に関してはその方が結局怖くなるのかもしれない。本作の子供と老人では恐怖を感じられないため、そうするより他ない気がしてくるのだ。と、そんな考察をするために見る分にはアリだと思います。ただし怖さを求めてこの作品を見るとがっかりするに違いない。
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